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PowerMacG4 (AGP) 水冷&超静音化

Others Vol.005

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ムーアの法則を根底に進化を続けて来たコンピュータの処理速度。しかしその裏側でCPU等の集積回路の発熱はもはや限界に達しようとしている。このままではいかんということで様々な冷却方法が模索されている昨今、コンピューター野郎の間でにわかにブレイクしているのが水冷システムである。コンピューターの水冷システムといえば水漏れの不安や導入の難しさから、DOS/V自作派の中でも一部のヘビーな層にしか受け入れられないキワモノ的な存在であったのだが、今年の夏あたりからオールインワンパッケージなどの割とお手軽に設置できる水冷グッズも発売されはじめ、ライトな一般的ユーザーの間でもじわじわと人気は高まりつつある。
一方、MacにおいてもG5のハイエンドマシンのCPU冷却に水冷システムが採用され、今後のCPUの発熱問題と空冷によるファンの騒音を解決する手段としてトレンドになって行きそうな気配。以前から興味は津々で、そろそろ水冷システムなるものを試してみねばならぬなぁ(もちろんMacで)と思っていたところ、知人からPowerMacG4(AGP)を激静音なAV専用機にしたいという相談を受けた。
えぇそりゃもう絶対水冷です!いや、水冷があたりまえなんです!!
ビバ、水冷!!
幸運なる好機を得ることができ、ついにPowerMacG4水冷に挑戦する事にあいなったのでした。

 

■Step 1

それでは最初にマシンの現状確認から行ってみることに。

PowerMacG4 (AGPモデル)

CPU: Sonnet 1Ghz
Mem: 1GB
GPU: ATI Radeon8500
HDD: Barracuda ATA IV 80GB
Optical Drive: Toshiba SD-1712
Audio card: RME 96/8 PST pro

その他の処置済み改良
・筐体内部のビビり抑制に鉛シート貼付け
・HDD,DVDドライブにDCノイズ低減用のコンデンサ付き電源ケーブルを使用
・IDEケーブルはDCノイズ低減用のスリムタイプのケーブルを使用

上記のようにすでに大幅なアップグレードが施されていて、元のスペックからは処理速度、機能ともに引き上げられている。特にSonnet1Ghz、Radeon8500に交換した恩恵は大きくてOSX10.3でもストレス無く利用できるレベルにある。しかし、その反面で1時間も使用していると筐体内部の温度上昇に反応した内部の12cm角ファンと電源ファンが高回転で回りだしてかなりうるさい状態になってしまっている。これはアップグレードしたCPUとGPUの発熱がそもそもの原因であり、Radeon8500上のファン(かなり高回転)の音も騒音の一因になっている。現状ではAV専用マシンとして運用するにはちょっと苦しい感じであることは間違いない。

 

■Step 2

水冷化するにあたり先ず念頭に置かなければならないのが、水冷=静音というのは決して同義ではないということである。というのも通常ラジエターはファンを使って放熱をするし、水を循環させるポンプもまた動作音がする。水冷の要であるこの二つがうるさいと結局改悪することにもなりかねない。しかも今回は超静音化も目標としているので水冷アイテムのセレクトはトータルバランスを考慮し、慎重に検討しなければならないのである。

そこで、PowerMacG4 水冷&超静音化を達成する為に必要な条件をあげてみると以下のようになる。

・CPUとGPUに水冷ヘッドを取付け、電源内部のファン以外の筐体内のファンはすべて取り払う。(ファンが無くなる事で電磁ノイズも低減する)
・電源自体も静音性の高いものに置き換える。(筐体内部の熱源が減るので低速ファン搭載の電源が使用できる)
・冷却の効率化と筐体内の温度をあげないためにもラジエターは外付けにする。
・ラジエターはファンレス仕様。

かなり難しい条件ではあるが少しずつクリアして行くとしよう。

 

■Step 3

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あたりまえのことではあるがコンピューターは電源無くして動かない。先ずは各デバイスに電力を供給する重要な役目を持ちつつ、静音化の鍵をも握っている電源から見直すことにした。
PowerMacG4 AGP にあらかじめ搭載されている電源は静音性などあまり考慮されていない時代のものであり、搭載されている8cm角ファン自体も静かとは言いがたい。単にファンのみを交換しても良いのだが、リフレッシュも兼ねて電源ごと交換する。
ご存知の方も多いかもしれないがPowerMacG4 AGP モデル(*1)の電源はPCのATX電源とほとんど同じ規格、仕様であり、(-5Vの出力の違いぐらい) ATX電源(20ピンタイプ)のコネクタの8番、18番ピンをカットすればPowerMacG4用の電源として利用できるのである。
そこで今回は豊富な種類と数を誇るPC用ATX電源の中からリーズナブルな値段でありながらも信頼性と静音性にすぐれていると評判であるグロウアップ・ジャパンのTOP-370XP(370W)をセレクトした。銅製ヒートシンク、山洋製の静音ファン、金メッキプラグを採用するなどなかなかのこだわりがある電源である。

この電源を実際にPowerMacに搭載するには以下の点に改良を施した。
・コネクタの8番、18番ピンを外し、ケーブルも電源ボックスの根元からカットする。
・Pentium4用のコネクタなど不要なケーブルを電源ボックスの根元からカットする。
・電磁ノイズ低減のためにケーブルをツイストする。(保護ネットを一旦外し、幹となるケーブルの束もツイストする)
・ACケーブルを差し込むコネクタの淵を若干削る。(削らないと筐体のプラスチックに干渉して取り付けられない。コネクタの淵はカッターでも削れます。)
・ファンの電源供給接点に無極性コンデンサと積層セラミックコンデンサを取り付けて電磁ノイズを低減する。(金ピカファンガードは外す)
・ファンのネジ留め部分にシリコンを挟み、回転から発生する振動を抑制する。(ネジも非磁性体のものを使用する)

電源自体は筐体背面のキャップスクリューネジ3カ所と筐体内部の固定金具を外せば交換可能になる。
交換後、テスト稼動させてみると思った以上にファンは低回転で音は静か。元に搭載されていた電源との違いは明らかである。
もっとも、電源内のファンコントロール機構でファンの回転は制御されているため、最終的な判断は水冷化が終わった後で行わなければならないが、かなりの静音効果が期待できる。

 

■Step 4

イシダキョージュの総回診です!
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次なるセレクトは肝心要の水冷アイテムである。前述したように多種多様なアイテムが各社から販売されているが、ラジエターがファンレス仕様であるものは非常に少ない。今回は超静音化にこだわりたいのでファン空冷仕様のラジエターはすべて除外する。
そんな厳しい条件の中で一際強烈なインパクトと性能を誇り、引きつけられたのがZALMANのReserator1である。このReserator1は「青い巨塔」という異名を持つほどデカいが、動作は極めて静かであるというウワサ。こやつを試してみない手はない!

発注した「青巨」が届き、箱からだしてみてそのデカさにしばし絶句。高さは59cm弱あり、PowerMacG4よりも断然大きい。押し出し形成による巨大な円筒のアルミニウムは外周自体がヒートシンクでありながらもリザーバタンクとして機能するという考えられた機構。デザイン的にもなかなかカッコ良くて本体の作りもしっかりとしている。
上部の重厚な蓋を開けて中を覗いてみると、水没式のポンプがタンクの底に配置されている。とりあえず動作テストをするために水流のIN,OUTを付属のチューブで繋ぎ、タンクに水を注ぎ(2.5l近く入る)スイッチをONにする。何秒かゴボゴボいった後は「しーん」と静まりかえった。本当に動いているのかと心配になり、タンクに耳を近づけてもとポンプの音はかすかに聞こえてくる程度。うーん。これは予想以上に期待できる逸材である。

 

■Step 5

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ラジエターの動作を確認したら、次は水冷ヘッドである。(ウォーターブロックともいう)水冷ヘッドは水流によってCPUやGPUのコアの熱を奪い取るパーツであり、水冷システムの要とも言える部分である。水冷ヘッドには固定するアダプタ金具(リテンションパーツとも呼ばれる)が不可欠なものであるのだが、通常これはIntelやAMDのCPUにあわせて作られていて、Mac対応のものは存在しない。このアダプタ金具がなければPowerMacの水冷化も水泡に帰してしまうと言っても過言ではないほど重要なものである。
「ないのならば作ってしまえ、ホトトギス。」とは誰も言いはしないが、spirica謹製PowerMacG4用水冷アダプタを製作し、固定問題をクリアさせることにした。

固定に問題が無くなったところで、CPUのヘッドにはinnovatek社のXX-flowをセレクト。innovatek社はドイツで水冷パーツを専門に開発、製造しているユニークな会社である。(日本でも取り扱い店あります)
XX-flowを選んだのは性能と品質もさることながら、形状的に筐体内部のDVDドライブベイと干渉せずに取り付けができるからである。(Reserator1には立派な水冷ヘッドが付属するのだが、厚みがありすぎてドライブベイと干渉し、ハッチが閉じられない)
実際にXX-flowを手にしてみると、見た目よりもずっしりとしていて重厚感溢れる作り。アダプタ金具にてCPUに固定した姿もなかなか格好良くて、これまた冷却効果が期待で来そうな感じである。

もう一つの熱源であるGPUの水冷ヘッドにはkoolance社のGPU-180-H06を使用する。GPU-180-H06 は薄型でフィッティング(チューブを固定する金具)が上面に無いので、PCIスロットを占有する事無く有効に使用できるからである。
GPU-180-H06には専用のアダプタ金具が付属するのだが、残念ながらRadeon8500には取り付けの穴が開いていないので、オリジナルのファン付きヒートシンクを外した後に熱伝導剤入り接着剤で固定する。(固定の際にはチューブの取り回しとフィッティングの向きを考慮しておく)

 

■Step 6

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水冷ヘッドを取付け終えたら、いよいよ水冷の醍醐味であるチューブの取り回しである。
この部分に問題があると水漏れや流水を阻害したりするので十分に気をつけて作業を行う必要がある。また、パーツごとにブランドを変える場合はチューブの径(外径、内径)(*2)にも考慮すべきである。
今回はCPUヘッドにinnovatek、GPUヘッドにKoolanceというようにそれぞれ異なる専用のチューブ径が混在するのでチューブ間には変換アダプタ(内径8mm→6-7mm USER'S SIDEにて購入)を利用する。(PCIスロットの占有を気にしなければGPUヘッドもinnovatekにしてチューブの規格を統一した方が作業は楽である)
本来はReserator1(ZALMAN)のチューブの規格も異なるのであるが、幸いチューブの内径が近くてinnovatekのものが代用できた。

ここで水流とチューブの中継、接続の順番をまとめると以下のようになる。
ラジエターポンプ(Reserator1)OUT→チューブ(innovatek)→CPU水冷ヘッド(innovatek)→チューブ(innovatek)→変換アダプタ→チューブ(Koolance)→GPU水冷ヘッド(Koolance)→チューブ(Koolance)→変換アダプタ→チューブ(innovatek)→ラジエターポンプ(Reserator1)IN

PowerMacG4でチューブを取り回す際は筐体ハッチを閉じた状態でチューブに無理な力が加わり、折曲がって流水の妨げになっていないかどうかをよくチェックしなければならない。(チューブの長さはやや余裕を持った方が良い)もちろんチューブのフィッティングに甘さが無いかも要チェックである。
筐体内外へのチューブ出入りは背面の開いたPCIスロットを利用する。(PCIスロットに空きがない場合は背面にドリルでホース穴を開ける荒技も有りである)

チューブの取り回しが完了した後、筐体内の騒音源の一因である12cm角ファンを大きなマウンタごと取り外す。(2個のネジを外せば簡単にマウンタが外れる)ファン&マウンタが無くなると内部はずいぶんすっきりと見えて通気性も向上しそうな感じである。

 

■Step 7

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取り付け作業は完了したので、仕上げとしてラジエターに冷却液を注ぐ。(マニュアルには8分目までと記載)
冷却液はクーラント液と精製水(1:4)を混合してつくる。Reserator1はデカくて冷却液の量も半端じゃない。今回はinnovatekのお徳用クーラント液を利用したが、コストパフォーマンスを考えるとバイク用のものでもOKであろう。(精製水は薬局で買えます)

すべての作業を終えいよいよPowerMacG4本体の電源を投下する。連動電源タップ(*3)によりReserator1も稼働し、PowerMacの起動処置と共にゴボゴボと冷却液が循環を始める。
数秒が経ち、チューブ全域に冷却液が行き渡った後は経験したことの無い静寂が訪れた。Power Macに耳を近づけるとスーという低回転で回る電源ファンの音がする程度であり、Reserator1に至っては寡黙さを誇示したまま直立している。机の下に両者を入れた状態ではほぼ無音と言っても差し支えない静音性である。(Reserator1はデカいが一般的な机の下には入ります)

ここで1時間ほどWEBブラウジング等の通常操作を行いCPUの温度の計測をし、改良前と比べてみる。

測定条件 室温29℃
温度測定位置 CPUコアに近い位置のヒートシンク、水冷ヘッドの温度を測定

[ CPUの温度の計測 ]
ノーマルPowerMac 38.7℃
水冷化PowerMac 34.3℃

温度低下は4℃程にとどまるが、室温を考えると十分な冷却性である。
Radeon8500のGPUに取り付けた水冷ヘッドも測定したところ32.7℃という好結果。
さらに、筐体内の温度も上がりにくいので電源のファンも静かさを維持している。

静音と冷却という二律背反をバランス良く達成したという意味で今回の作業は大成功といえるであろう。特に筐体内からファンが無くなった静かさのメリットは計り知れない程のインパクトがある。もちろん目的であった激静音なAV専用機(*4)としても合格点を与えられるレベル。
心配な点があるとすれば、ここまで静粛な環境を体感してしまうと2度とうるさいマシンは使えなくなってしまうのではないかということだったりする。

静音化という問題に対して答え求め続け、そこらへんの静音では満足できなかった人には大いなる自信を持ってリコメンドしたい改良である。

未体験の静音ゾーンにトライしてみませんか?

 

 

(*1)似たマシン構成ではあるが残念ながらPowerMacG4(GigabitEther)モデルにはATX電源(20ピンタイプ)搭載することはできない。CPU(最大1.4Ghz Dual)と電源が交換できるということから考えるとAGPモデルが最もカスタマイズしがいのある(遊べる)マシンともいえる。
(*2)innovatekのチューブ径は(内径8mm/外径10mm)Koolanceのチューブ系は(内径 約6.3mm/外径 約9.5mm)
(*3)ZALMAN Reserator1はAC電源駆動なので、PowerMacの電源とON、OFFを連動させるにはOA用の連動電源タップを利用するのが手っ取り早い。電源を交換しないのであれば電源付属のAC出力から電力を取るのも可能。
(*4)今回作業は電磁ノイズの低減にも大きな効果があり、RMEの96/8 PST pro のデジタルOUTがCEC社の高価格CDトランスポートの音質にも匹敵するほどになったそうです。(知人談)

PowerMacG4の電源を交換する場合はくれぐれもご注意の上、各人の責任にて作業を行ってください。電源ピン接続を誤った状態で電源を入れた場合、PowerMac本体や電源を故障させるおそれがありますので十分ご注意ください。
また当サイト内容、表記に誤りがあったとしても一切責任は負えない事をあらかじめご留意ください。

※spiricaではPowerMacG4の静音化、水冷化作業を承っております。(東京近辺の方であれば出張も承ります)ご希望の方はお問い合わせくださいませ。