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PowerMac G5 静音化

Others Vol.007

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以前にPowerMac G4(AGP)の水冷化(Part1)作業をさせていただいたSさんより、今度はPowerMac G5の静音化の相談を受けました。PowerMac G5の静音性に期待したものの、あまり静かではなく騒音がどうしても気になるとのこと。G5はG4時代のユーザーの意見を取り入れて、かなりの静音性が実現されているという触れ込みであるが、実際のところはどうなのか非常に興味があったので、依頼を受けさせていただきました。

 

■Step 1

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送っていただいたPowerMac G5は初期の1.6Ghzシングルモデルである。ご存知の方も多いと思うのであるが、G5の冷却構造を少しおさらいをしておこう。
G5筐体内はCPU,グラフィックカード等の発熱部に対してエリアを区切り、筐体前面部から背面へのエアフローでスムーズに廃熱ができるようになっている。筐体内に露出するケーブル類も極めて少ないので、風抜けの良さも抜群。本体素材は放熱に優れるアルミニウムで筐体自体も大きい。内部の熱はこもりにくく、完成度の高い空冷システムとなっている。(一部のG5のハイエンドマシンには水冷システムが搭載されている)

先ずはその静音性をチェックしてみるために実機に電源を入れてみたのだが、「これは決して静かなマシンではないぞ」というのが率直な印象である。感覚的にはMDDと同種のうなり音を発生しているように感じる。空冷としてはかなり理想的な構造であるのになぜうるさいのか?原因をさぐるために各ファンを調べることにした。

 

■Step 2

廃熱のファンは電源内部のファンを含めて全部で8個搭載されている。(DualCPUモデルの場合は9個)これは一つのファンで回転数を稼ぐより複数のファンを低速で回転させる方が同じ風量でも静音性を保つことができることを考慮してのことである。
各ファンはOS側で制御されており、温度の変化によって回転数が変化する。(負荷がかからないアイドル時にはファンは低速で回転する)

筐体内各ファンの詳細は下記の通り。

場所 静音性
ファン1:HDD冷却 ファン(8cm角) 筐体上段エリア手前 静か
ファン2:HDD冷却シロッコ型ファン 筐体上段エリア奥 ややうるさい
ファン3:グラフィックカード冷却ファン(8cm角) 筐体中段エリア前面 やや軸音が目立つ
ファン4:CPU冷却ファン(9cm角) 筐体下段エリア前面 静か
ファン5,6:廃熱ファン(9cm角) 筐体下段エリア後部 静か
ファン7,8:廃熱ファン(6cm角) 電源内前面部 うるさい

調べた結果を見てみるとうるさいファンは4つあった。
まず、ファン2のHDD冷却シロッコ型ファン、このファンはファン1と並んで位置していて筐体カバーを開けただけでは姿を見ることができない。シロッコ型のファンのため独特の軸音があり、音はやや目立つ。ファン3は低速で回り、静かな部類に入るが、若干軸音が聞こえる。
そしてファン7,8の電源内部ファンであるが、これがうるさい。理由はPowerMacG4 MDDモデルと同じで、長細い電源の内部熱を2つの6cmファンで廃熱しているからである。口径の小さいファンでは風量稼ぐ必要があり、回転数もあがる。しかも電源自体が長い箱状になっているのでファン音がさらに反響、増長してしまうのである。(MDDの電源よりかはましであるがうるさい事には変わりない。)
G5全体の騒音はほとんどこの電源内ファンの音が占めいて、その他で静かに回っているファンを台無しにしてしまっていると言っても過言ではない。

 

■Step 3

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騒音の原因はつかめたので、あとはひとつひとつ潰していくことにする。

ファン2のHDD冷却シロッコ型ファン対策であるが、併設の8cm角ファンがあるので実際の運用上は回らなくても実害はさほどない無い。(G4時代はHDD専用の冷却装置さえなかった)ロジックボードに接続されているコネクタを外すとシロッコファン独特の音がなくなり静音性が少しUPした。ファンを停止してもHDDの急激な温度上昇は確認できなかった。

次にファン3のグラフィックカード冷却ファン。前述したようにこのファンは若干軸音が目立つので山洋の静音ファン(1600回転)に交換する。コネクタは純正と同じもの(Molex)に付け替える。グラフィックカードがRadeon9600(ファンレス)なので風量的にも十分である。静音性も少しUP。

 

■Step 4

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最後の難関は、電源内部のファン。まず電源を筐体から外し、カバーを開けなければならない。(カバーを開けるまでに結構な数のネジがある)開けてみると解るがファンはG5を正面から見て最前面に2個配置されている。長い空洞内の空気を一方向から押しやるためには、やはりファンの回転数を増やさなければならない訳である。(よってうるさくなる)しかしながら、単純にファンを静音タイプに交換するだけでは風圧が減退し、内部に熱がこもることになるので注意が必要である。

 

■Step 5

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ファン騒音を減らしながらも風圧を稼ぐにはどうすればよいのか?すこし考えてみたが答えはわりと簡単でG5の基本コンセプトと同じことをやればいいのである。
具体的な解決策として電源内後部にもファンを増設することにした。
作業としてはまず、前面部の6cm角ファン2個を静音タイプのファン(最大2500回転)に交換する。次に後部に配置するファンであるが6cm角では電源内部に収まらないため一回り小さい5cm角ファンを2個配置する。固定は厚手の強力両面テープで問題ない。(素材がウレタンなのでファンの振動を抑える効果もある)ファンの電源は前面部のファンと同じところから取るので、ファン回転の制御も連動する。

最後の仕上げとして内部のヒートシンクの熱が電源ケースの上部に伝導して放熱を促進するようにゲルシートも配備する。(意外とこれが効果あるかも)

 

■Step 6

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すべての作業が完了し、そそくさと電源ケースをG5筐体内に納めて動作をチェックする。
ジャーンという起動音の後は明らかに全体の騒音が低減されていて、改良前の電源部のうなり音も確実に小さくなっている。そのまま稼働を続けて、異常が発生しないかどうかも入念にチェック。
1時間ほど経過した後でも電源後部の排気熱は40℃前後であり、稼働上問題は無い。
全体としてはだいたい40%~50%の騒音減といったところであり、静音化の結果としては合格点には達していると思われる。

 

 

作業を終え、依頼者の方にも満足いただけて光栄の至りではあるのだが、少しだけ腑に落ちないところもあったりする。
それはG5で採用している電源の仕様である。筐体内部の効率的な冷却システムは圧倒的な静音性を実現できるはずなのに、電源の構造上発生する騒音がすべてを打ち崩しているのである。(電源の騒音は結局G4 MDDからあまり進歩していない)
筐体のレイアウト上、電源が長細い形にせざるを得なかったのかもしれないが、今回やった電源内部改良と同じようなことを予め設計することは十分できたはずである。また、電源に関してはPCと同じATXタイプを採用すればもっと静かにすることができたように思える。
ハイパワーなスペックはアピールしやすくて優先されるのも解る(名前もPowerMacなだけに)のだけど、映像や音楽関係の方が仕事として使用する場合はもちろん、ホームユーザーにとっても静音性はパワーと同じぐらい需要なリソースである事をもっともっとAppleに認知してもらいたい!と思ってしまうのは勝手な言い分なのであろうか。ハイパワーでありながらも、スーパーサイレントなPowerMacの登場に想いを馳せる今日この頃である。

 

コラム中のファン2はHDD冷却用ではなく、マザーボード上のチップの冷却用のファンであるというご指摘をいただきました。
初期モデルより後のG5ではこのシロッコファンが省略されていますが、コラム中と同じ初期モデルのG5でファンを停止することにより問題が発生する可能性があります。(コラム中のマシンにおいては長時間にわたる稼働検証を行い、問題は見受けられませんでしたが、ファンの停止を推奨するものではありません)
また、このコラムの静音化はPowerMacG5の初期モデルを対象としています。
(現行のPowerMac G5は静音対策が向上しているようです。ファンの数も減っています。)

2005.05.26